2010年 01月 24日
【リアル・放浪記、林芙美子になりきって】 横浜たそがれ |
『 12月8日
お君さんが誘いに来て、二人は又何かいい商売をみつけようと、小さい新聞の切抜きをもって
横浜行きの省線に乗った。 』
新しい年が始まって、早くも一ヶ月が静かに過ぎようとしている。
「今年はひとりでパリに行ってみようかと思う。」と言う友人の顔が、とってもキラキラしていたので、さて私はどうしようかと考えてみた。
ぼろぼろになった林芙美子の『放浪記』のページを手繰りながらふと思いついた。
「林芙美子が歩いた幾万の土地を、ひとつずつ追いかけてみよう。」と。
『 二人共だまって、電車から降りると、青い海を見はらしながら丘へ出てみた。
「久し振りよ、海を見るのは……」
「寒いけれど、いいわね海は……」
「いいとも、こんなに男らしい海を見ていると、裸になって飛びこんでみたいわね。
まるで青い色がとけてるようじゃないの。」
「ほんと! おっかないわ……」
ネクタイをひらひらさせた二人の西洋人が雁木に腰をかけて波の荒い景色にみいっていた。 』
48年という短い生涯のなかで、林芙美子という人は、旅ばかりしている。
林芙美子の200編を余裕で越える短編小説のなかに出てくる町は、私の知らないところばかり。
『 二人共又押し沈黙って向うの寒い茫漠とした海を見ている。烏になりたい。
小さいカバンでもさげて旅をするといいだろうと思う。
君ちゃんの日本風なひさし髪が風に吹かれていて、雪の降る日の柳のようにいじらしく見えた。 』
(『放浪記』第1部より)
小説の中の、ここから遠く、知らない土地を思い浮かべるたびに、保身を捨てた鳥になる夢を見る。
そうだ、私はいつだって飛び立てるんだということを思い出すのです。
お君さんが誘いに来て、二人は又何かいい商売をみつけようと、小さい新聞の切抜きをもって
横浜行きの省線に乗った。 』
新しい年が始まって、早くも一ヶ月が静かに過ぎようとしている。
「今年はひとりでパリに行ってみようかと思う。」と言う友人の顔が、とってもキラキラしていたので、さて私はどうしようかと考えてみた。
ぼろぼろになった林芙美子の『放浪記』のページを手繰りながらふと思いついた。
「林芙美子が歩いた幾万の土地を、ひとつずつ追いかけてみよう。」と。
『 二人共だまって、電車から降りると、青い海を見はらしながら丘へ出てみた。
「久し振りよ、海を見るのは……」
「寒いけれど、いいわね海は……」
「いいとも、こんなに男らしい海を見ていると、裸になって飛びこんでみたいわね。
まるで青い色がとけてるようじゃないの。」
「ほんと! おっかないわ……」
ネクタイをひらひらさせた二人の西洋人が雁木に腰をかけて波の荒い景色にみいっていた。 』
48年という短い生涯のなかで、林芙美子という人は、旅ばかりしている。
林芙美子の200編を余裕で越える短編小説のなかに出てくる町は、私の知らないところばかり。
『 二人共又押し沈黙って向うの寒い茫漠とした海を見ている。烏になりたい。
小さいカバンでもさげて旅をするといいだろうと思う。
君ちゃんの日本風なひさし髪が風に吹かれていて、雪の降る日の柳のようにいじらしく見えた。 』
(『放浪記』第1部より)
小説の中の、ここから遠く、知らない土地を思い浮かべるたびに、保身を捨てた鳥になる夢を見る。
そうだ、私はいつだって飛び立てるんだということを思い出すのです。
by natsu-daisuki
| 2010-01-24 00:19
| ▪️林芙美子、リアル放浪記