2010年 07月 01日
【リアル・放浪記、林芙美子になりきって】 ゆかりの地、尾道へ / 林芙美子の母校 |
その尾道で出会ったある人は、
「小説そのものというよりも強く、その作品を書いた人をとっても好きになる」
と言ったので、私はこの人とこの先長い付き合いになりそうな予感がした。
それは私も同じで、林芙美子の数え切れないほどの作品から浮かび上がる、林芙美子という一人の人間、その人にとても惹かれる。
嬉しい楽しい悲しい悔しい美しい美味しいがリアルだから、ページをめくるたびに私をわくわくさせるし、そしてそれらの感情は、体験した人間にしか表現できないものであり、少なくとも私の心を揺さぶる。
だから林芙美子の見たもの全てを見てみたいと思うし、その人のとてつもなく深い感情の底を探りたいと強く思う。多くは自叙的なものだから、ヒントはいくらだって見つけられる。
『 小学校へ行く途中、神武天皇を祭った神社があった。
その神社の裏に陸橋があって、下を汽車が走っていた。
「これへ乗って行きゃア、東京まで、沈黙っちょっても行けるんぞ」
「東京から、先の方は行けんか?」
「夷の住んどるけに、女子供は行けぬ」
「東京から先は海か?」
「ハテ、お父さんも行ったこたなかよ」 』 (『風琴と魚の町』より)
林芙美子は大正5年(1916年)に尾道に移り住んでから、小学校5年に編入しました。
尾道市立第二尋常小学校、現在の土堂小学校です。
『 随分、石段の多い学校であった。
父は石段の途中で何度も休んだ。
学校の庭は沙漠のように広かった。
振り返ると、海が霞んで、近くに島がいくつも見えた。 』
小学校で出会った教師小林正雄に文学の才能を見出され、卒業後、尾道市立高等女学校に進みます。
現在の尾道東高等学校です。
明治42年(1909年) 4月に開校した尾道市立高等女学校。
当時高等女学校に進学できるのは裕福な家庭の限られた子女で、貧しい生活の林芙美子が通えるような学校ではありませんでした。
帆布工場でアルバイトをしながら学費を稼ぎ、弁当のない日も少なくなかったようです。
学校生活のほどんどの時間を、人気のない図書館で過ごしたといいます。
教師森要人は林芙美子のもうひとりの恩師で、林芙美子に詩を教えた人でもあります。
詩という短い文章の中に、限りのない情景を想像させる力を身につけました。
『 今考えだしても学校時代は何の愉しみもなかった。
私は、あんまり女学校時代のことを書かないけれども、
森先生以外にはなつかしいと思う先生がひとりもない。』 (『私の先生』より)
「小説そのものというよりも強く、その作品を書いた人をとっても好きになる」
と言ったので、私はこの人とこの先長い付き合いになりそうな予感がした。
それは私も同じで、林芙美子の数え切れないほどの作品から浮かび上がる、林芙美子という一人の人間、その人にとても惹かれる。
嬉しい楽しい悲しい悔しい美しい美味しいがリアルだから、ページをめくるたびに私をわくわくさせるし、そしてそれらの感情は、体験した人間にしか表現できないものであり、少なくとも私の心を揺さぶる。
だから林芙美子の見たもの全てを見てみたいと思うし、その人のとてつもなく深い感情の底を探りたいと強く思う。多くは自叙的なものだから、ヒントはいくらだって見つけられる。
『 小学校へ行く途中、神武天皇を祭った神社があった。
その神社の裏に陸橋があって、下を汽車が走っていた。
「これへ乗って行きゃア、東京まで、沈黙っちょっても行けるんぞ」
「東京から、先の方は行けんか?」
「夷の住んどるけに、女子供は行けぬ」
「東京から先は海か?」
「ハテ、お父さんも行ったこたなかよ」 』 (『風琴と魚の町』より)
林芙美子は大正5年(1916年)に尾道に移り住んでから、小学校5年に編入しました。
尾道市立第二尋常小学校、現在の土堂小学校です。
『 随分、石段の多い学校であった。
父は石段の途中で何度も休んだ。
学校の庭は沙漠のように広かった。
振り返ると、海が霞んで、近くに島がいくつも見えた。 』
小学校で出会った教師小林正雄に文学の才能を見出され、卒業後、尾道市立高等女学校に進みます。
現在の尾道東高等学校です。
明治42年(1909年) 4月に開校した尾道市立高等女学校。
当時高等女学校に進学できるのは裕福な家庭の限られた子女で、貧しい生活の林芙美子が通えるような学校ではありませんでした。
帆布工場でアルバイトをしながら学費を稼ぎ、弁当のない日も少なくなかったようです。
学校生活のほどんどの時間を、人気のない図書館で過ごしたといいます。
教師森要人は林芙美子のもうひとりの恩師で、林芙美子に詩を教えた人でもあります。
詩という短い文章の中に、限りのない情景を想像させる力を身につけました。
『 今考えだしても学校時代は何の愉しみもなかった。
私は、あんまり女学校時代のことを書かないけれども、
森先生以外にはなつかしいと思う先生がひとりもない。』 (『私の先生』より)
by natsu-daisuki
| 2010-07-01 00:00
| ▪️林芙美子、リアル放浪記